2019年の高卒新人打撃成績比較まとめ。
圧倒的な成績を残した山下航汰(巨人)を筆頭に、各チームの主軸を今後担って行くポテンシャルを感じさせる太田椋(オリックス)、万波中正(日本ハム)、濱田太貴(ヤクルト)、林晃汰(広島)、野村佑希(日本ハム)らをピックアップしました。
さらにはドラフト当時高校BIG3と呼ばれ注目を集めた小園海斗(広島)、藤原恭大(ロッテ)、根尾昂(中日)の成績もチェックします。
はじめに
2019年の高卒新人に焦点をあてます。
2018年の高校野球は藤原(ロッテ)・根尾(中日)・柿木(日本ハム)・横川(巨人)らを擁する大阪桐蔭高校が史上初の2度目となる春夏連覇を達成した年でした。
プロに入らず大学や社会人に進んだ選手の多くも各チームで主力級の活躍を早くから見せており、いかに2018年の大阪桐蔭高校が強力であったかを感じさせてくれます。
ドラフトでは大阪桐蔭の藤原・根尾に報徳学園高の小園(広島)を加えた高校BIG3が西武を除く11球団の1位指名を分け合う形となるほど、大きな注目を集めました。
根尾選手には中日・日本ハム・巨人・ヤクルトの4球団、小園選手にはオリックス・横浜DeNA、ソフトバンク、広島の4球団、藤原選手には楽天・阪神・ロッテの3球団からの指名を受け、それぞれ中日、広島、ロッテへの入団が決まりました。
この3人以外にも、太田(オリックス)・小幡(阪神)・増田(巨人)・野村(日本ハム)ら上位指名で多くの高校生野手が指名され、ドラフト時点で高卒野手が豊作とされた年でした。
そんな豊作の年に指名された高卒野手たちがプロに入って1年目の2019年にファームでどのような成績を残したか、見てまいりましょう。
2019高卒野手 打撃成績比較
成績比較には出塁率、長打率とその和から計算されるOPSを用います。
一般的に一軍のレギュラークラスであればファームではOPS.700~.800を楽勝で超えていてほしいところでありますが、高卒新人であればプロへの順応を果たすための期間であることも多いので、.600を超えればある程度御の字と考えることができるでしょう。
100打席以上をファームで経験した選手を下図のグラフにまとめました。
横軸に出塁率、縦軸に長打率を設定しており、赤線は出塁率と長打率の和であるOPS=.500, .600, .700, .800, .900の線をひいています。
右上に点があるほど、好成績ということになります。
100打席以上経験した選手のうち、OPS .600を達成した高卒野手は全部で12名。
今後、他年度の高卒野手の成績比較もまとめていく予定で、現時点で正確な比較はできませんが、かなり多いのではないかと思います。
さすが豊作の年。
(年度ごとのOPS .600超えの選手の人数比較については、個々の年度のまとめが完了した時点で改めて行いたいと思います)

上位指名の同期たちを押さえ圧倒的な成績を残した育成氏名の山下航汰(巨人)
図を見てまず明らかに一人抜き出ているのが分かる山下(巨人)。
健大高崎高校時代には2年春のセンバツで下級生ながら4番に座り満塁本塁打を2本打つなど高校通算75本のホームランを打った選手。
ただ先述の高校BIG3ほか多くの野手に比べると話題に上ることはそうありませんでした。
指名順位は育成1位。
しかしながらプロに入りあっという間に3軍から2軍へと昇格、高卒野手としては圧倒的な成績を残し続け7月には支配下登録を勝ち取りました。
打率.332、7本塁打、OPS.867と確実性もパンチ力も存分にあることをアピールし、歴代スターへと上り詰めた選手と比べても遜色ない成績と言えるでしょう。
ほかの個人成績を見ると、6盗塁を決めているものの、12盗塁死していることから、成功率はそれほど高くありません。
脚力よりはどっしりとバッティングで一軍の座を勝ち取っていくことになるかもしれません。
2019年のシーズンオフから2020年のシーズンに入り、故障が続いているようで思うように打席にも立てておりませんが、身体を万全にして育成出身からのスター街道へと邁進できる状態に戻してもらいたいですね。
主軸を担って行く可能性を感じさせる太田・万波・濱田の第2グループ
続く第2グループには、OPS.700超えを果たした太田(オリックス)・万波(日ハム)・濱田(ヤクルト)。
太田はショートなど守備の負担の高いポジションをこなしながら、OPSも.743を残し、1年目後半には1軍の打席にも立ちました。
あいにく1年目に1軍でヒットは出ませんでしたが、2年目の2020年には1軍昇格を果たし、昇格1戦目の初打席で初安打初ホームランを記録しました。
さらには翌日の試合でもホームランを放ち、パンチ力も持ち合わせる大型内野手としてのポテンシャルを見せつけました。
万波は1年目から2軍で14本塁打を記録し、非凡な長打力を発揮しました。
確実性はまだ課題があるところでしょうが、出塁率に目を向けると案外高く四球は選べています。
この長打力を武器にして、今後も大きく育っていって欲しいものです。
濱田も万波同様長打力が武器の選手。
高校2年の夏に出場した甲子園で3試合で2本塁打9安打を放ち、一気に注目を集めました。2軍成績でも打率に物足りなさはあるものの本塁打を順調に積み重ねており、将来的に中軸を打つ選手への成長が期待されます。
また盗塁も11個(成功率85%)決めており、足も使えることをアピール出来ているのは良いですね。
野村・林もあと一歩でOPS.700の好成績
OPSが.700にはあと一歩及ばなかったものの、確かな実力を感じさせたのは野村(日本ハム)と林(広島)。
野村は2年目となった2020年、開幕前から1軍首脳陣にアピールを続け開幕1軍を確保、さらにはサードのビヤヌエバが故障で不在の間に1軍投手から2本塁打を放ち、一時的に定位置を取りかけた。かに思えましたが右手指を骨折し、離脱。
復帰が待たれる逸材であります。
林はスイングスピードの速さで高校時代に注目されていた選手でしたが、どことなく脆さも感じさせた選手だったように思います。
1年目は確かに出塁率が3割を切ったものの、2年目の今季はここまで打率も出塁率を順調に向上させており、課題の改善に至っているように見受けられます。
高校BIG3の小園・根尾・藤原はどうだったのか
この世代を本来代表すると言って過言ではない小園(広島)・根尾(中日)・藤原(ロッテ)はどうだったのか。
この記事は2軍成績の比較をベースに行っていることをまずご容赦いただきたいが、ことその2軍成績においては3人とも他の高卒野手と比べて目立った成績を残せたわけではありません。
しかしその中でも小園はシーズン途中から期待込みで一軍昇格を果たし、カープのそれまで不動のショートであった田中広輔との併用をされるなど、1年目にしてはなかなかの活躍を果たしました。
特に4本塁打を放った長打力は意外性とともに今後へと大いに期待を感じさせるものでした。
藤原も期待を受けて1年目の開幕戦で1番・センターを任されるなど1軍の舞台を経験しました。
思うほどの成績は残せなかったものの、プロ初安打は記録し、2軍でも.OPS 619と1年目としてはまずまずと言える成績を残した。
盗塁16個を記録した足は今後の武器になってくるでしょう。
根尾はシーズン序盤にはOPS.500を切るなど、プロに入って苦労しているのが感じられるシーズンでした。
それでも終盤には少しずつ成績を上げてきたのが、2年目の今季ファームでの好成績(9月4日時点 打率.271、3本塁打、OPS.738)につながり出していると言えます。
高校BIG3と大きく注目された3人だけに、ファンからも早くからの活躍を期待されるでしょうが、着実に成長をして花開くのを待ちたいところです。
高卒野手が豊作と言われた2019年。
その名の通り、1軍でも多くの野手が各チームの主力選手として活躍するのを楽しみに待ちたいですね。
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