2020年の高卒新人の投球成績まとめ(9月4日時点の成績)。
好成績を残す宮城(オリックス)・浅田(横浜DeNA)を筆頭に、奥川(ヤクルト)・西・及川(阪神)など高校時代に甲子園を沸かせた有名選手や、井上(巨人)・前(オリックス)らこれからに期待の選手をピックアップしました。
はじめに
コロナウイルスの影響で開幕が遅れた2020年プロ野球。
ファームではこの遅れにより予定試合数が各チーム100試合未満となっていますが、9月4日現在、各チーム概ねシーズン試合数の半分近くの40-50試合を消化し終えました。
新人選手にとっても、シーズン開始がずれ込んだことで、例年のルーキーたちに比べて調整が難しい側面はあるとは思われますが、果たしてどの程度の選手が頭角を現しだしているのか。
特に高卒新人仕上がりに時間がかかる、高卒新人の成績を見て参りたいと思います。
今回は投球(ピッチャー)編。
高卒新人の投手に何を求める?
実際の成績を見て一喜一憂をする前に、高卒投手に求められる成績というのはどんなものでしょうか。
一軍で活躍する投手であれば二軍レベルなら防御率2点台、奪三振率9以上、K/BBは3以上を求めたいというのがあるでしょう。
しかしながら今回議論するのはプロに入って数カ月の高卒新人。
選手によってはまだ身体作りを優先している時期でもありますし、まずは「試合に出ている」というだけでもプラスポイントと言えるかもしれません。
一方で球界を代表する選手になった選手にはファームでの1年目から圧倒的な成績を残して羽ばたいていった選手も少なくありません。
これについては別途まとめていきたいと思いますが、高卒1年目からの早い段階から好成績を見せる選手については、その先の活躍に対する期待も高まります。
成績比較
二軍での登板を果たした投手は10人だけ
投手というのは野手以上に身体づくりに重きを置く必要があるポジションです。
高校時代に肩や肘に負担をかけて戦っていた選手もいるでしょうし、筋力的にまだプロに通用するボールが投げられない段階の選手もいるでしょう。
またプロレベルの制球力を身につけられていないと、試合が作れない、というケースもあります。
以上から、ファームの首脳陣も高卒投手への登板機会は慎重に与える傾向にあるようです。
そんな中、2020年9月4日現在で二軍での登板機会を得ている高卒投手は次の10人のみ。これは筆者自身も想像していたよりは少ない数字でした。
やはり、コロナで試合数が少ない中で、調整が難しいこと、また出場機会をまずは1軍の戦力になる選手に与えるという意味合いが強いのかもしれません。
チーム別でみると、
- オリックスが佐藤一磨(横浜隼人高)、中田惟斗(大阪桐蔭高)、前佑囲斗(津田学園高)、宮城大弥(興南高)の4人
- 阪神が及川雅貴(横浜高)、西純矢(創志学園高)の2人
- 巨人が井上温大(前橋商)、横浜DeNAが浅田将汰(有明高)、ヤクルトが奥川恭伸(星稜高)、ロッテが横山陸人(専大松戸)のぞれぞれ1人
となっています。広島、中日、ソフトバンク、西武、楽天、日本ハムの6球団はまだ高卒投手の登板はありません。
この辺り、各球団の首脳陣の育成方針が表れているようにも思えますね。
30イニングを越える宮城(オリックス)と浅田(横浜DeNA)

そんな中で、宮城(オリックス)と浅田(横浜DeNA)の二人が30回を越えるイニング数を投げて規定投球回には届かないものの高卒新人の中では群を抜いています。
投球成績の数字も素晴らしいもので、宮城が防御率2.41、浅田が防御率2.84と早くも各チームの2軍エース級の成績といってもいいのではないでしょうか。
細かい数字に目を向けると、宮城がWHIP 1.218, 奪三振率6.42, 四死球率3.48となっていて、まだ改善の余地はあるとは言え、既に安定して試合を作れているのが分かります。
今シーズン終盤戦の紹介試合での1軍登板も充分にありえるでしょう。
浅田についてはWHIP 1.326, 奪三振率4.55, 四死球率5.40ということでK/BBが1を割っていることもあり、若干防御率と比べると見た目は落ちます。
もう一段コントロールの精度を上げながら、三振をとれるボールを投げられるようになれば一軍が見えてくるでしょう。
首脳陣の期待がうかがえる西(阪神)、及川(阪神)、中田(オリックス)
15イニングを投げている西、及川、中田の3人も首脳陣に今後に向けた期待がかけられていると考えて良いでしょう。
細かい投球成績に目を向けると、西は四死球率の高さ(4.91)、及川は被本塁打の多さ(4被本塁打)と奪三振率の低さ(3.77)、中田は被安打数の多さ(22被安打)がそれぞれ見て取れます。
四死球率の高さに関してはそのまま制球力の上昇、奪三振率や被打率の高さに関しては球の勢いの向上が必要になるということが言えます。
このあたり、各選手登板機会を得ながら今後改善を試みることでしょう。
少ないイニング数ながらもさすがのポテンシャルを感じさせる奥川(ヤクルト)と追う井上(巨人)・前(オリックス)
この世代はドラフト時に世間を大きく賑わせたツートップ、佐々木朗希(ロッテ)と奥川(ヤクルト)がいますね。
佐々木にいたっては1軍に帯同させながらも登板はなし。
情報も少なく不穏な状況も想像してしまいますが、杞憂であってほしいですね。
もう一方の奥川も上半身のコンディション不良があったということで、実戦から少し足が遠のいていました。それでもそれ以前に残した成績では4試合6 2/3回を投げ9奪三振、四死球なしとさすがのポテンシャルを感じさせます。
ボールの勢いは二軍レベルを圧倒して一軍にも通用するといって過言ではないのではないでしょうか。
しかし期待しすぎは禁物、じっくり身体を調整して、来年あたりの新人王獲得に向けて着実に進んで欲しいです。
井上(巨人)はイニング数こそ少なく、防御率も4.70とぱっと見、さほど目覚ましい活躍には見えませんが、奪三振率・四死球率に目を移すとそれぞれ8.22、1.17と三振をとりながらフォアボールを出さない安定した投球が出来ているのがうかがえます。
8月9日の2軍での初先発で初回に3ランを打たれるなどしたようですが、私は防御率以上に奪三振率・四死球率から好感を持てると思っています。
これからに期待です。
前(オリックス)もイニング数が少なく、WHIPが1.5より大きいので、それほど素晴らしい成績には見えませんが、この要因は四死球率の高さ(6.43)。
一方で奪三振率も高い(11.57)ので、コントロールされてはいないものの勢いのある球が投げられているというのが示唆されます。
制球力を向上させられれば、圧倒するような投球が見られるようになるかもしれません。
以上、ご覧いただいたように、高卒投手はまだまだ登板機会も少ないですが、2年目3年目に向けて成長を遂げている途上と考えればよいでしょう。
そういう意味では、とりわけ投手については高卒2年目・3年目の投手が二軍でいま残している成績に焦点を絞ってみるのもいいかもしれませんね。
1年目からの成長度合いというのを、今の高卒1年目投手に当てはめてみることも可能かもしれません。
今後の選手達の活躍に期待しましょう。
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